発注者向け情報

  1. 設計競技を実施するメリット
  2. 設計競技とプロポーザルの違い
  3. ガイドラインの使い方
  4. 品確法を知る
  5. 賞金の考え方
  6. コンペの運営事務局
  7. 審査員の選定と紹介
  8. コンペ実施のリスクを知る
  9. 募集要項の作成
  10. 発注者のスキルアップ
  11. ロゴマーク(ロゴマークについて、認定基準、申請手続き)

① 設計競技を実施するメリット

設計競技のメリットは、発注者、競争参加者、社会全体のいずれにもありますが、特に発注者のメリットとして、以下のようなものがあります。

  • 他の調達方式では得られない優れたデザインを実現しやすい。
  • 民間の技術力やデザイン力を最大限に引き出せる。
  • 最優秀提案者は、コンペ後に契約する設計業務やデザイン監理業務を通じて優れた「作品」を実現することへの強い動機が働くため、プロジェクトの質を最後まで高く維持することができる。
  • 発注者のビジョンや方針、コンペの意図、コストの上限等を募集要項に明記することで、発注者の期待に沿いながらも優れたデザインを得ることができる。
  • 設計競技の実施は各種メディアでも取り上げやすく、人々の関心や話題性を集めることができる。また、イベント性や透明性を高めることにより、さらにその効果を増すことができる。
  • デザイン監理者が施工完了まで継続的に関わるため、統一的で一貫したプロジェクトにしやすい。
  • デザイン監理者が施工完了まで継続的に関わるため、地元との関係構築やコミュニケーションの円滑化を図りやすい。
  • 発注者の担当者が人事異動で替わっても、一貫してプロジェクトに関わるデザイン監理者がいることで、新たな課題事項が発生しても、過去の議論や経緯を踏まえた解決策を導きやすい。
  • 事業によっては、設計競技のプロセスそのものに概略設計や予備設計の内容を含めることができるため、設計競技実施後に詳細設計に近い段階から設計をスタートすることができ、概略設計や予備設計を別途発注する必要がなくなる場合がある(工程短縮、コスト削減、事務手続きの簡略化等の余地が生まれる)。
  • 発注者として設計競技のプロセスを経験することや、最優秀提案者との協議等を通じて、発注者としての能力向上を期待できる。

② 設計競技とプロポーザルの違い

プロポーザル方式は、具体的なデザインを競うものではなく、業務に対する「実施方針」や「評価テーマに対する技術提案」が最も優れている提案者を選定し契約する方式です。一方、設計競技方式は、具体的なデザインを直接競います。近年、プロポーザル方式を謳いながら、実際には高度なデザイン案の提出を求めるような「事実上の設計競技」が実施されている事例もありますが、そのようなプロポーザルは、品確法15条2項「技術提案を求めるにあたっては、競争に参加する者の技術提案に係る負担に配慮しなければならない」に抵触する可能性があるため注意が必要です。高度なデザイン案の提出を求める場合には、プロポーザル方式ではなく「設計競技方式」として位置づける必要があります。

なお、設計競技を通じて選定されたデザインは、その後一切の変更が許されないと誤解されることがありますが、設計競技であっても、当然、その後の詳細設計等で必要に応じた変更は生じ得ます。ただし、提案当初の基本的なイメージは保持される必要があるため、審査委員会には、実現できないような提案を選定することのないよう、相応の高い見識が求められます。

③ ガイドラインの使い方

ガイドラインは、全編を読んですべてを理解しなければならないわけではありません。当面のコンペ実施に必要な箇所だけを参照いただければ十分です。発注者の担当者が容易に使いこなせるように、できるだけ丁寧な記述としていますが、具体的な事項については、コンペ実施の可能性を模索している程度の段階からでも、まずは一度、当小委員会にご相談ください。適切にアドバイスさせていただきます。

④ 品確法を知る

公共調達は、国においては会計法、地方公共団体においては地方自治法により、一般競争入札、指名競争入札、随意契約のいずれかによるものとされており、なかでも一般競争入札が基本とされています。これは物品やサービスの購入など、原則として、すべての公共調達に適用されます。しかし、公共工事等に関しては、国・地方公共団体ともに、品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)により、「公共工事の品質は(中略)多様な入札及び契約の方法の中から適切な方法が選択されることにより、確保されなければならない。」 (3条4項)、及び「発注者は、競争に参加する者に対し、技術提案を求めるよう努めなければならない。(後略)」 (15条1項)と定められており、これは工事だけでなく、それに関する調査・設計業務も対象とされています。つまり、公共工事及びその調査・設計業務においては、会計法・地方自治法・品確法の3つの法律が一体として運用され、価格競争ではなく、技術提案を求める方式が原則とされているのです。

高度な技術や優れたデザインが求められる土木構造物や土木施設、屋外公共空間等の調査・設計については、技術力(デザイン力)により成果が大幅に異なり、また工夫の余地も非常に大きいことが一般的です。品確法の考え方に照らしても、このような場合に単純な価格競争が適さないことは明らかです。

先進的な発注者では、インフラ整備をきっかけとして地域の魅力を最大化する方策として、設計競技方式が採用され始めています。ただし、発注者によっては、庁内独自のルールによって、設計競技方式のような新たな方式への対応が柔軟にできない場合も存在しますので、設計競技の実施を検討している発注者は、まずは庁内独自のルールに障害となるものが存在しないかを確認し、存在する場合は、ルールの改正も視野に入れた早めの対応が必要です。当小委員会にもご相談ください。

公共工事の入札・契約の根拠法令の遷移

⑤ 賞金の考え方

品確法に「技術提案を求めるにあたっては、競争に参加する者の技術提案に係る負担に配慮しなければならない」(15条2項)と書かれているように、提案のために多くのコスト、時間、人的資源等を投入しなければならない設計競技方式では、優れた提案者に対して、何らかの支払い行為が必要となります。これまでの日本の公共事業の業務委託プロセスにおいて、提案自体に報酬等を支払う慣習はほぼありませんでしたが、設計競技方式の導入は、提案への支払い行為とセットで行われる必要があります。どのような設計競技に対してどのくらいの報酬が適切かということについては、海外では具体的な基準を決めている国もありますが、国内にはまだそのような基準はありません。過去の国内の事例などをふまえてアドバイスさせていただくこともできますので、賞金額の設定についても当小委員会にご相談ください。

⑥ コンペの運営事務局

コンペの運営事務局は、発注者の業務主管課が自前で行うことももちろん可能ですが、外部のコンサルタント等に委託することもできます。運営事務局は、コンペ実施に関する各種準備、要項作成、広報、連絡窓口、提出物の受領と確認、審査の段取り、結果の公表等を行います。コンサルタントに委託する場合、提案内容の技術的・費用的妥当性の確認もあわせて委託することも可能です。

⑦ 審査員の選定と紹介

発注者にとって、審査員の選定は悩みどころです。誰に頼むのがよいか・・・、その分野でどのような人がいるのか・・・、発注者にとって好ましくない案が選ばれたらどうしよう・・・、交通費をあまりかけたくないので遠方の人は極力避けたい・・・などの思いがあると思います。そのようなときも当小委員会にご相談ください。全国のネットワークから最適な審査員を紹介します。

⑧ コンペ実施のリスクを知る

デザインコンペは、地域の魅力や価値を高める優れたデザインを適切なコストで調達・実現できる有効な手法ですが、どんな場合にでもコンペが適しているわけではありません。コンペ実施のリスクについてもよく理解し、実施の是非やリスク対策をあらかじめ考えておかなくてはなりません。具体的なリスクについては、ガイドライン共通編7章に記載していますのでご参照ください。きちんとしたリスク管理を行い、ガイドラインに沿った内容で実施すれば、コンペを必ず成功させることができます。

⑨ 募集要項の作成

コンペが成功するかどうかは、「募集要項」と「審査員選定」にかかっていると言っても過言ではありません。まずはこの2つをしっかりと押さえておくことが重要です。特に募集要項には、コンペの趣旨や種々の条件が明示され、そのコンペの「かたち(枠組み)」が規定されます。募集要項の作成にあたっては、審査員にも意見を聞きながら、また、事前に把握している地元要望なども盛り込みながら、しかし基本的には、発注者自身が作成しなければなりません。募集要項の作成技術も、発注者として大切な技術力のひとつです。ガイドラインでは、コンペの募集要項に、何をどこまでどのように書き込むべきか、作成例とともに詳しく解説しています。

⑩ 発注者のスキルアップ

コンペを実施するにあたり、発注者は、準備段階からコンペ後の設計段階、施工段階を通じて、様々なことを考え、経験していくことになります。それは単に標準的な設計をして積算・発注する仕事とは大きく異なります。発注者として、その事業にどのようなことを期待するのか、発注者としての「思い」を、募集要項にしっかりと反映させていく必要があります。設計段階においても、選定されたデザインを実現するために、様々な協議が必要となります。施工時においても、標準的でない問題に悩まされることがあるかもしれません。しかし、そのようなプロセスを経験することで、発注者のスキルは確実に、格段に向上します。そしてきっと、「コンペを実施して良かった」と思うようになるはずです。このウェブサイトにも「経験者の声」として、コンペの実施を経験した発注者の声を掲載しています。ぜひご覧ください。

⑪ ロゴマーク(ロゴマークについて、認定基準、申請手続き)

コンペはただ実施すればよいわけではなく、適切に実施することが重要です。ガイドラインはそのために存在しています。ガイドラインに沿って適切に実施すれば、必ずよい結果が得られます。コンペの募集要項等が一定の基準を満たしていると当小委員会が判断する場合、そのコンペを『土木設計競技ガイドライン』に準拠するものと認定し、当小委員会のロゴマークの使用を許諾・付与できます。申請者(設計競技の主催者)は、ロゴマークを募集要項の表紙などの分かりやすい位置に掲示するとともに、ロゴマークの説明を明記することで、当該コンペがガイドラインに準拠した適切なコンペであることを対外的に示すことが可能です。

ロゴマーク認定基準(準備中)