『土木設計競技ガイドライン・同解説+資料集』は2018年に土木学会より出版された設計競技に関する土木分野で初めてのガイドラインです。主に行政機関が発注するインフラ施設や公共空間の整備に「設計競技方式」を実施する際の参考として、基本的な考え方・必要な情報・目的やパタン別の実施手順・参考事例をまとめています。以下、ガイドラインの内容を一部紹介します。
土木設計競技ガイドライン・同解説+資料集
ガイドラインの主な内容
設計競技方式を採用するメリットは何か?
通常の設計業務を通じてでは発案されないような、地域のシンボルとなる特に優れたデザインや、場所の価値の向上するデザインを実現しやすいといえます。
また、設計当初に実現させたい目標像(イメージ)が明確になることによって、以下のようなさまざまなメリットがあります。
〔原論1:理念(p.Ⅰ-1~)、共通編7:設計競技のメリットとデメリットおよび留意事項(p.Ⅱ-10~)〕
コンペ(設計競技)とプロポーザルは何が違うのか?
プロポーザルは業務を実施する「人」を選び、設計競技は「設計案」を選びます。設計の対象となる施設の具体イメージまでを求めるのであれば、本来、プロポーザル方式ではなく設計競技方式を採用するのが妥当です。そのうえで、最も優れた設計案を提出した者と契約を結ぶことになります。
〔原論1:理念(p.Ⅰ-1~)、共通編3:本ガイドラインの適用範囲(p.Ⅱ-5~)〕
コンペ(設計競技)はどのようなケースで適用できるのか?
設計内容や実現する空間に高い質やオリジナリティを求める場合には、コンペ(設計競技)が有効な手段となります。コンペはさまざまな調達方式に対応可能であり、設計業務の発注を前提とする設計業務付帯型(標準型)のほかにも、設計と施工一括のデザインビルド付帯型、オペレートも求めるDBO付帯型、土木分野以外にも門戸を広げると同時にデザイン監理者としての参画を求めるチャレンジ型、設計業務の発注を前提としないアイデア公募型など、目的に応じて適切な方式を選択することができます。
〔共通編11:各調達方式の基本的事項(フローチャート)(p.Ⅱ-22~)、8:設計競技の適するケースと適さないケース(p.Ⅱ-15~)〕
設計競技方式の導入を検討するにあたり、事務局が担う仕事の全体像と流れが知りたい。
設計競技を含む事業のプロセスは、通常のものとやや異なります。事業実施前の検討やフィージビリティスタディ、スケジュール調整や関係者との合意形成がより重要になります。【実施編】には、その全体像とプロセスの流れが詳しく書かれており、各段階で留意すべき事項を知ることができます。
〔実施編1:概要(全体作業フロー)(p.Ⅱ-49~)、1-2:設計競技のプロセス(p.Ⅱ-50~)〕
公共土木事業で制度的にコンペ(設計競技)の実施が可能なのか?
平成26年の品確法改正以前は一般競争入札が原則でしたが、現在では公共工事の品質確保のため、多様な入札・契約のなかから適切な方法を選択することが原則となっています(平成30年時点)。入札・契約の原則が大きく変わり、目的によってはコンペの実施が公共調達の有効な手段となっています。事例編には、これまでの実績が紹介されています。また、発注機関内部で定める「設計競技要綱」のサンプルも掲載されています。参考にしてください。
〔原論3:法令面からみた設計競技(p.Ⅰ-7〜)、書式編(p.Ⅲ-1~)、事例編(p.Ⅲ-39〜)〕
設計競技方式を実施する場合、どのような準備をすればよいのか?
設計競技を行う場合には通常の業務以上の入念な準備が必要です。良い提案を得るためには、設計条件および要求事項を明確にすることが非常に重要です。また、どのような条件を整えれば優れた提案者が応募するか、競争参加者からみたインセンティブについても考慮して条件を設定する必要があります。
〔実施編2:事前検討事項(p.Ⅱ-52〜)、共通編7-2競争参加者のメリットとデメリット(p.Ⅱ-13〜)〕
設計競技を実施するにあたり、気をつけなければならないポイントが知りたい。
設計競技には成否を分ける重要なポイントがいくつかあります。特に「6つの基本原則」はしっかりと押さえておく必要があります。また、目的が明確かどうか、協議やその体制が十分か、募集要項や実施要綱が入念に準備されているか、適切なリスク管理や十分なフィージビリティスタディがなされているか、適切に審査員を選定しているか、などはいずれも成功に欠かせないポイントです。事例編の各事例から学ぶのも有効でしょう。
〔共通編5:設計競技方式の「6つの基本原則」(p.Ⅱ-7~)、共通編13:設計競技の成否(p.Ⅱ-43〜)、事例編(p.Ⅲ-39〜)〕
設計競技方式によって採用された優秀提案者との契約は、通常の事業とは異なるか?
設計競技においては、著作物である応募作品を扱うことになりますので、著作権の取扱いには特に注意が必要です。例えば、応募作品の著作権は原著作者に帰属しますが、選定された案にもとづいて設計・施工された成果物の著作権は、発注者と受注者の共有に帰属します。そのため、応募者・受注者による著作権の行使には一定の制限を設けておかなければなりません。また、応募者のインセンティブやデザインの統一性確保の観点から、選定されたデザインの応募者とは、実施した設計競技のタイプに応じてその後の設計業務またはデザイン監理業務の契約を結ぶことが原則です。
〔実施編5:契約(p.Ⅱ-69〜)、共通編13:設計競技の成否(p.Ⅱ-43〜)〕
実施要綱はどのように作成すればよいか?
書式編に、関係書類・書式例を掲載しています。設計競技実施要綱と募集要項について、具体例を作成しています。ぜひご活用ください。
〔書式編1:関係書類・書式例(p.Ⅲ-1〜)、事例編(p.Ⅲ-39〜)〕
ガイドラインを読んでも、まだ不明な点がある。どこに相談すればよいか?
メールでのお問い合わせ、ご相談を受け付けていますので、本ガイドラインの利用に関する相談窓口である土木設計競技ガイドライン事務局まで電子メールにてご連絡ください。本ガイドラインに関するウェブサイト(http://www.designcompe.info)にも、問い合わせフォームがございますのでご活用ください。なお、お問い合わせにより当事務局が知り得た情報は、許可なく第三者に知られることはありません。当事務局は、公共事業発注に利害関係をもたない中立的立場の学識経験者のみで構成されています。
お問い合わせ先: info@designcompe.info
設計競技を実施する場合には、以下の6つの基本原則のすべてが満たされなければなりません。
原則1)公共価値原則
原則2)公平性原則
原則3)透明性原則
原則4)目利きによる審査の原則
原則5)継続性原則
原則6)誘因両立性原則
デザインを競う調達方式を契約上の工程範囲で大別すると、①設計段階のみ(D)、②設計・施工段階(DB)、③設計・施工・オペレート段階(DBO)の3種類に分類できます。
プロポーザル方式や総合評価落札方式は、考え方や方針を競うものであり、本来、具体的なデザインを競うものではありません。具体的なデザインを競う場合は、設計競技方式(またはデザインコンペ、設計コンペ等)と呼称するのが適切です。その上で、優秀提案者への報酬(賞金)、著作権の適切な取扱い、施工時のデザイン監理を含む継続的な契約等が求められます。現状はまだ、「プロポーザル」と呼称しながら事実上のデザインコンペを行っているような事例も見受けられますが、それらは、設計競技(デザインコンペ、コンペ等)と呼称されるべきであり、コンペの原則が適用されるべきものです。
設計競技の種類
資料編の関係書類・書式例をダウンロードいただけます。